時代にふさわしいアイドルを発掘するオーディション『ミスiD2015』でグランプリを獲得し、イラストレーターやモデル、展覧会のキュレーターなど、多彩な顔を持つ水野しずさん。2017年からは、多種多様なパフォーマンスを創り出すアート集団「カリスマサイド」の主宰としても活躍しています。さまざまな形でアウトプットし続ける水野さんに、学生時代のことや表現活動について考えていることを語ってもらいました。

絵とわたしのカンケイ

インタビューが始まると、クロッキーとペンを取り出して、何やら絵を描きだした水野さん。息をするように絵を描いているという感じです。絵を描くことは、水野さんにとって生きていることの一部のよう。

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―物心ついたときから絵は描いていたんですか?

「具象的なものを描けるようになったのは、けっこう大人になってからです。幼少期は抽象的なものばかりを描いていました。まわりの子がお姫様の絵を描いたり、お城の絵を描いたりするという感覚が理解できなくて。小学生の時は鳥の絵をよく描いていましたね」

―鳥が好きだったんでしょうか?

「鳥はもしかしたら自由なんじゃないかなと思っていて、空想上の鳥を描いていました。自分の概念上の鳥を大事にしていたんですよね。でも、ある日、ドラクエIIIをやっていたら、神様から『鳥は自由だと思いますか?』っていう質問をされて、考えさせられたんです。それで、『あ、鳥は自由じゃないかもしれない』って思って、あまり鳥を描かなくなりました。他にも、森林とか自然の絵とかを描いていましたね」

―中高生のころもイラストや絵を描くなどの創作活動はしていたんですか?

「そうですね。中2か中3くらいのときに、想像してみたんですよ。自分が将来的にどうなるかを。自分を客観視して想像したときに、普通に働ける想像が全然できなくて…。ああ、このままだと自分は両親に教育を受けさせてもらっている期間はいいけど、それが終わったら病院か墓地が刑務所しか行くところがないんじゃないかって(笑)。本当に突き詰めて考えていったらそうだなと思って。その時から、一般的な会社員とかじゃないゴールを目指していかなきゃいけないんだって思いました。そんなときに、友達にすごく絵が上手な子がいて、彼女は美術系の高校に行ったんですね。自分も美術系の高校いいなって思ったんですけど、行きませんでした。自分の絵を他人に見せたことがあまりなくて、表現したものを人に見せるのはおこがましいことだと思っていたんです」

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インターネットの住人になりたい

―絵を描くこと以外に学生時代はどんなことに興味がありましたか?

「インターネットですね、趣味は。小4の時にコンピュータークラブに入って。田舎だったので、まだインターネットが普及していなかったんですけど、自分には想像もつかないような人間がいることを知って視野が広がりました。それと、インターネットだと目的のある会話しかしないんですよね。学校ではみんなけっこう同じ話しかしてない中で、インターネットでは専門用語がすごく多かったり、独自のプロトコルみたいなものがあったりする会話をしていて、すごくクールで素敵だなと思ったんです。自分もそういうクールな人になりたいと思って、インターネットに住んでいようという気持ちになりました」

―「インターネットに住む」とはどういうことでしょう?

「自分の場合だけかもしれないですけど、幼少期って心の場所がわりと現実じゃなかったりすると思うんです。住もうと思えば、ゲームや本の中に生きることもできる。だったら、自分はインターネットの中でホームレスになろうと思って。感覚的にインターネットって定まった住所があるものではないと思っていたんですよね。だから2011年くらいまでSNSは全然やっていませんでした。インターネットって、情報が正しいかどうかを受け手が判断しないといけないという前提がある世界だから、その中で匿名じゃない存在としてリテラシーを自分側に引き受けて情報を発信することって、もはやインターネットじゃないという感覚がすごくあったんです。
でも、震災が起こり、突然多くの方々の命が奪われ、気持ちが変わりました。2016年に『KOJIKISYSTEM』っていうグループ展を企画して、4人の人に声を掛けたんですけど、彼らはインターネット上に住所をつくって生きる場所をつくっているように見えたんですよね。実際、私もSNSを始めたり、自分の名前でインターネット上でモノを発信するようになってから、自分の考えがすごく伝わりやすくなったり、他人にどう伝えればいいのかっていうプロセスがわかるようになったりと、他人とコミュニケーションがとりやすくなりました」

美術やアートをやるための道は一つじゃない

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―高校卒業後に東京の美大に進学されていますが、先ほどの「表現したものを人に見せるのはおこがましい」という思いが変わったきっかけは何でしょうか?

「高2か高3くらいの時に、他人に絵を見せるとか見せないとか以前に、自分の中に抱えているものが爆発して、抱えていたものが外に出てきちゃったんです。無心でずっとノートにワーッと緻密な絵を描いていて。そんな中、大学の進学について考える時に、できれば自分は一生関係あることを大学でやりたいと思ったんですね。無駄にはならないとは思うんですけど、学んだことの先にある人生との関係性が希薄で、ぼんやりとした目的意識のない場で4年を過ごすというのはあまり想像ができなかった。目的と具体的に地続きになっている場にいたいなと思ったので、東京の調理学校に行こうと思っていたんです。そうしたら、母親とかに『美大に行かなくていいの?』と言われて。それまであまり自分の絵を人に見せているつもりがなかったので、そういう人って認識されているのはちょっと意外でした。まあ、美大も受けてみて、落ちたら調理学校に行こうっていうくらいに考えていましたね。中学生くらいの頃から、東京に行きたいと思っていたんです。自分が生きる手段を見つけるためには、多様性のある空間の方がいいんじゃないかって思っていて」

―そこから美術予備校に通われたんですか?

「はい。春期講習みたいなものを受けてデッサンや平面構成を学んだんですが、そのころ自分はちゃんと技法を習得したことがなくて、自分の好きな描き方で描いていたんです。そしたら、それを見た人が自分の知っている正統派なプロセスじゃないからといってすごく嫌な顔をしたんですね。その時、『プロセスって自由なはずなのに』と、違和感をすごく感じました。デッサンをやっていた時も、まっすぐな線が引けないことに対してすごく怒られて。でも、自分の世界の中にまっすぐな線ってないんですよね。こんなに排除圧というか淘汰圧が強い付け焼刃の教育を受けても、本懐に叶わないなと思いました。ブロイダーの育成みたいな感じがして。1年間でやろうとしたらしょうがないんですけど、それには染まれないと思って、文章を書くのが得意だったので小論文などを書いて入る学部に入学しました。
そんな経験もあって、美術をやりたい人に対して思うのは、美術高校に行く選択肢を考えてほしいですね。美術予備校とは違って、3年間かけて自分の生き方や生活に根付いた形で美術を学べるので、全然違うと思うんです」

―普通に学生生活を送っていると美術高校の存在自体、なかなか知る機会がないですよね。

「美大に進学するという選択肢自体、普通に中学や高校に通っているカリキュラムの中には出てこない情報ですよね。かなり主体的に調べないと出てこない。でも、今はスマホもあるので、そういう情報にもアクセスしやすくなっているとは思います。美術をやりたいって人は、早め早めにまわりの人に相談するのもいいし、もし絵を描く以外のアートをやりたいってことだったら、美大以外の選択肢もすごくいっぱいあるよって伝えたい。色々視野を広げて考えてもらえると嬉しいです」

―美大に進学後、中退されたのは、入ってみて思っていたのと違ったということですか?

「そうですね。やっぱりビジネスライクな乾いた場所だなと思って。しょうがないんですけど、そこに自分が求めていたものがあるわけがない。というか、求めているものがある場所なんてあるわけないじゃないですか。自分で創るしかないんですよね。若かったんで、それが十分に理解しきれていなかった部分もありましたね」

―その後、イラストレーターや漫画家、モデルなど多方面で活動されていますが、その原動力は何なのでしょう?

「自分の場合、何か理由があってそうしているんじゃなくて、そうせざるを得なくなっているだけなんですよね。毎日同じことを繰り返すことができないので、自分の環境とか、自分自身とか、自分の関わり方とか全部をアップデートさせていかないと興味が持てなくなっちゃうんです」

―だから、カリスマサイドの公演も一回限りで同じものは二度とやらないという…。

「そうですね。本当はそういう活動をしたかったら、多少はやらなきゃいけないとは思うんですけど」

―表現活動をするうえで、一番大事にしていることやこだわりを教えてください。

「こだわりなんかはない方がいいと思っていて。つくり手のエゴって余計だと思うんですよ。だから、なるべく無念無想、我欲を消して無我の境地に至れたら最高だなって思っていますね。でも、自分を顧みるに我欲にまみれていて、我欲の炎みたいなものはフツフツと消えることがないなと。そこから解き放たれていきたいなとずっと思っています」

一つ一つの質問に真摯に答えてくれた水野さん。自分で自分の居場所を創る――。その思いが多岐にわたる活動につながっているのだと感じました。

カリスマサイドの公演での水野さん

カリスマサイドの公演での水野さん

image【カリスマサイド次回公演】
カリスマサイド
インスタレーション公演
「毒の沼地でカンフー」
2017年10月13日(金)
19:00開演
場所:味道本色 代々木店
中華料理98種類食べ放題付き
チケット代金5,000円

カリスマサイドの最新情報は
コチラ

水野しず
OFFICIAL WEBSITE

岩本 恵美

岩本 恵美

フリーランサー(編集・執筆、たまに翻訳)

東京・下町生まれの下町育ち。Webメディアや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランサーに。経済からエンタメまで、気になったら何でも手を出す雑食系。アナログなものづくりもデジタルなものづくりも、どっちも好きです。

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