市原えつこさんは、日本に古くから存在する土着文化や習慣、信仰などをテクノロジーと結びつけて作品にしているメディア・アーティスト。2016年の第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門で優秀賞を受賞したほか、総務省異能vationにも採択されています。

 

例えば、市原さんの作品のひとつ「デジタルシャーマン・プロジェクト」では、新しい弔のかたちを提案。ロボットに3Dプリントした顔を取り付け、さらに口癖やしぐさをプログラムに組み込んで、まるで故人が憑依したかのような演出を施しています。

 

「デジタルシャーマン・プロジェクト」
プログラムは49日間を過ぎると自動消滅するように設定されています。

 

また、「都市のナマハゲ – Namahage in Tokyo」では、秋田県・男鹿半島周辺で行われている伝統行事ナマハゲを都市向けに再解釈。各都市の「悪い子」(=しつけの必要な大人)を特定し、大晦日にセンシング技術とVR技術を駆使したマインドハックによる“しつけ”を施すというストーリーを構築して作品を制作しました。

 


 「都市のナマハゲ – Namahage in Tokyo」
本プロジェクトは、JETRO「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査:文化を通じた機運醸成試行プロジェクト」として採択されました。

 

そんな数々のプロジェクトを手がけてきた市原さんですが、実はプログラミングを自分で組んだりすることはほとんどないそう。では、一体どのようにしてテクノロジーを駆使した作品を生み出しているのでしょうか?

 

自分でできないからこそ、チームを組む

—市原さんはご自身でプログラミングを組んだりすることはあまりないそうですね。

 

「基本的にはプランニングとディレクション、デザインがメインです。プログラミングに関しては専門家にお願いすることが多いですね。実は大学生の頃にプログラマーに憧れていた時期があって、本を買って勉強したりしていたんですけれど、プログラマーとして仕事ができるまでには至らず。

今はウェブサイトのコーディングができるレベルで。それも以前勤めていた会社で身につけたので、学生時代にライフイズテックのスクールがあったら絶対に通っていたと思います」

 

—できないからこそ、人を集める?

 

「実際、ひとりでできることってそんなに多くないですから。特に会社だといろんな分野のスペシャリストがいて、チームを組んで取り組むことの方が多いですよね。それと同じで、プロジェクトごとに最適な職能を持った人を見つけて制作するようにしています」

 

はじめは思いつきでも、徐々に作品の完成度を上げていく

—作品はどのように制作しているのでしょうか?

 

「実は思いつきで作ってみることが多くて。だから、最初はクオリティもすごく低い。でも、荒削りでも面白かったら発表したときにそれなりのリアクションを得ることができるんですよ。それである程度の手応えを感じたら徐々にブラッシュアップして、作品としての完成度を上げていくんです」

 

—その発表するというのは、具体的にどのような場所で行うのでしょうか?

 

「最近はYouTubeやTwitterなどのSNSや動画サービスにあげることが多いですね。そこで面白いとなったら、すぐに話題になるじゃないですか。だから、今の環境ってすごくいいですよね。売れないまま何年もコツコツやらなくても、ソーシャルメディアをうまく活用すればさっさと認知度を上げて、しかもお金も稼ぐことができる。だから、今、若い人たちはどんどんそういうものを活用していけばいいんじゃないかなと思います。女子高生が作ったアプリとか絶対に話題になりやすいし、使いたいですもん」

 

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これからは「個人」にファンがつく時代になる

—今の時代に高校生でいたかったですか?

 

「そうですね。私が高校生だった頃には現在ほどソーシャルメディアが発達していなかったですから。今なら都心に住んでなくてもインターネットを使って作品を発表することができますし、ノウハウを吸収するスピードも若い方が圧倒的に速いと思うんですよ。なので、才能を存分に伸ばせる環境があるなって。羨ましいかぎり。生まれ変わりたいですね(笑)。

 

これからの時代は、個人で発信している人たちにファンがついていくと思うんですよ。だから、恥を恐れず、若気の至りや勢いでも良いのでどんどん発信していってほしいですね」

 

昔はカッコ悪いと思っていたことも、離れて魅力に気づいた

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—市原さんが土着文化や信仰に興味を持ったのはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

 

「私はもともと地方出身なんですが、広島とか愛知とか、わりと西の方を転々としていて、そこでその土地に根付いた文化にいろいろ触れる機会があったんですね。でも、中高生頃のときはカッコ悪いと思ってそういうものは敬遠していたんです。

 

でも、大学進学のときに上京して、一回自分の生まれ育った土地を離れてみたことでその素晴らしさに気づいたというか。それまで当たり前のように見てきたものを客観的に考えるようになったのが良かったんだと思います」

 

日本で受け入れられないことも海外ではフツウ

—いま注目している海外の文化はありますか?

 

「東南アジアが熱いですね。現地の文化は宗教とテクノロジーが自然に結びついていることが多くて。たとえば仏像の背後に電飾を施していたり。現在の私たちから見ると仏像はとても歴史のあるものに見えますが、実は当時の最新テクノロジーを駆使して作られているのではないでしょうか。それと同じで、常に宗教美術を技術でバージョンアップしていこうって考えが強いんだと思います」

 

—日本でやったら不謹慎って言われそうですけれど、違うんですね。

 

「日本だと宗教とテクノロジーを組み合わせたりすると胡散臭いと思う人が多いと思うんですけれど、特に東南アジアだと普通に受け入れられているんですよね。例えばタイでは、土着文化が最新のクラブカルチャーを組み合わせるムーブメントがあり、盛り上がってるみたいですよ」

 

—今後はそういった海外の文化にも視野を広げて活動していくのでしょうか?

 

「そうですね。海外を相手にしていけば、もっと大きな母数をターゲットにすることができるので。最近だとデジタルシャーマン・プロジェクトのフランス版を制作しています。向こうでは四十九日という概念がないから、それをどうやって別のものにしていくかとか、いろいろ模索中です。

 

でも、基本的には楽しんでもらえるようなものを作っていきたいだけなので、それを違う文化圏にどうやって伝えていくかを考えています」

 

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日本のみならず、世界へと活動の幅を広げていきたいという市原さん。まだ知られていない日本の文化をテクノロジーの力を使って広めていく。そのなかで、海外の人たちだけでなく日本人も、日本の新しい魅力に気づけることも多いに違いありません。

 

 

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編集チーム

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