マンガやノート、食べかけのお菓子などが雑然と並ぶ、このお部屋。部屋は部屋でもサイズはミニチュアなんです。

その証拠にベランダの窓からは、ピースサインがニョキ!(巨人ではありません)

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この部屋を作ったのは、ジオラマ・コマ撮りアニメクリエイターのMozuさん、19歳。
想像するだけで細かな作業に頭がクラクラしてきそうですが、この作品を作ったのはなんと高校1年生の時とのこと。しかも、全て手作りで一から作っているのだとか。
高校卒業後は進学せずに“ある目標”を掲げてクリエイターとして活動しているMozuさんに、学生時代のことやクリエイターとしての原点など、創作活動にまつわることをたっぷりと聞いてみました。

ツイッターで一夜にして有名人に

「ジオラマ」「コマ撮りアニメ」でググると上位に出てくるのが、高校生クリエイターの記事。その高校生というのがMozuさんでした。

—今やちょっとした有名人ですが、制作したジオラマ作品やコマ撮りアニメはもともとどこかで発表していたんですか?

「いや、この部屋のジオラマも存在を知っているのは数人の友達と家族だけだったんですよ。当時は僕、ツイッターもやっていなかったんで。それですごいことが起こったのが、高校2年生だった2015年の秋ですね。はっきりと覚えているんですけど、10月7日に僕の人生を変える出来事があって。高校の友達がツイッターで僕の作品を紹介してくれたんです。そしたら、次の日、連絡があって、『お前の作品がヤバいことになっている』って」

友人が作品を紹介したツイートは一晩で約5万リツイートされ、爆発的に拡散されたそう。その数日後には、Mozuさんは自身のツイッターアカウントを作成。フォロワーはいっきに1万人を超えました。

—まさにバズったんですね。気分はどうでしたか?

「ほとんど誰も知らなかった僕の作品がいっきに知られて、気分は上がりましたね。一方で、ツイッターとかは面倒くさいっていうのは散々聞いていたので、恐る恐るアカウントを作りました。昨日まで誰も知らなかったのに、いきなりフォロワー1万人超えとか、ネットで調べたら自分の作品がいっぱい出てくるって、すごく怖いじゃないですか。でも、そうやって多くの人の目に触れることで、いろんな人から声をかけられて道が開けていきました」

当時、部屋のジオラマとともに拡散されていたコマ撮りアニメがこちらの「故障中」という作品。

この作品をきっかけに、大好きなコマ撮りアニメ「ひつじのショーン」を制作するイギリスのアニメスタジオ、アードマン・アニメーションズの関係者とつながりができたといいます。

—それはテンションが上がりますね。

「2016年の夏に『ひつじのショーン展』が銀座であって、実際にアードマンの現地スタッフの方ともお話をさせてもらったんです。自分が作った台車のミニチュアとかも持って行って、『こういうのを作っています。アードマンで働きたいんです』と、けっこう積極的に言ってました。そこで僕のやる気はますます上がるわけですよ」

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「美術系の高校に通っていたんですが、高校3年の時に1年かけて作る卒業制作があって、新たなコマ撮りアニメを作ったんです。完成した時に『見てください』とアードマンの方にメールを送ったんですよ。大学には行かないつもりで、『アードマンに行く』っていう目標があって。でも、なかなか返信が返ってこなくて。みんなが進路を決めていく中、2、3ヶ月返信がなくてすごく焦りましたね」

その卒業制作作品がこちら。セットを作るのに約半年、撮影にも約半年と、ほぼ丸一年かけて制作したそう。もちろん、セットは全て手作りです。

初めてづくしのイギリス滞在

「でも、ある日、『こっちに見学に来ないか』って返信が返ってきて。それで今年5月にイギリスに行ってきました。海外旅行も一人旅も初めてだったんですけど、パスポートを取りに行ったり、飛行機やホテルの手配をしたり、自分で色々調べて、1週間滞在してきました。この時ATMも初めて使ったんですよ。4000円くらい下ろそうと思ったら、間違えて6万円も下ろしちゃったりして(笑)。この1週間は本当に楽しかったですね。あんまり写真を撮らない僕が200枚くらい撮っていて。ロンドンバスとか、ビッグベンとか、イギリスの観光名所を巡って楽しみました」

—憧れのアニメスタジオを見学してみてどうでしたか?

「スタジオ自体はDVDの特典映像で何度も見ていたので、『知っている場所だ!』って、すごい興奮しましたね。スタジオの偉い方が『もっと作品を作って動画にして送ってくれたら、上の人にも見てもらうから』って言ってくれて、今はそれを目指している感じです。また次の切符を手に入れたというか、目標が見えました。ツイッターから始まって、全部僕の最終目標『アードマンで働く』に向けてつながっているんですよ。面白いですよね」

そして日本に帰国後もそのミラクルの連鎖は続きます。イギリスのアニメ制作会社からインターンシップの話が舞い込んだのです。今度は6月半ばから2週間のイギリス滞在。まだ明かせませんが、とある有名監督の作品に携わることに。

—イギリスでの経験で得たものは何ですか?

「視野が広がりましたね。10代のうちに一度は海外に絶対行った方がいいです。
それと、頭の中で思い描く作品の完成度が高くなったというのもあります。向こうの現場でプロの仕事を見て、『世界レベルでは、ここまで作るんだ』って知って、自分が作品を作る際に頭で考えるレベルが上がりましたね。
あと、飛行機で海外に行くという、移動手段の中でも最大級のことをやったので、だいたいどこにでも一人で行けるようになって、フットワークが軽くなりました」

スーパーポジティブ思考で脳をだます!?

「これは父親譲りなのかもしれないんですけど、僕も父も何かをするときに成功することしか考えない人なんですよ。失敗した時のこととか、一切考えない。それで、たまに痛い目にあうこともあるんですけどね。でも、そうやってイメージすることで、脳が多分、だまされるんですよ」

—頭の中で成功を思い描いているから、運も引き寄せているのかもしれないですね。

「運は僕、いいと思います。この時代に生まれたのも運がいいと思っていて。僕の作品って、ツイッターがなかったら広がってなかったと思うんです。それとスマホ。この間、気付いたんですけど、僕の作品ってデジカメで撮ると死ぬんです。デジカメって正確に写すから、ミニチュアを撮ったらミニチュアになっちゃうんですよ。でも、スマホのカメラだと若干魚眼レンズみたいな感じになっているから、本物のように見えるんです。本当にこの時代に生まれてきて幸せですよ」

ものづくりの原点は父

—学生時代はどんなことをして過ごしていましたか?

「僕は小学生のころから絵を描くのが好きでした。もともと父が漫画家を目指していて、小さいころから一緒に絵を描いたりしていたんです。小5くらいから漫画を描き始めて、それを父が写植して本にしてくれるんですよ。もうそれがうれしくて、楽しかったなあ。本を学校で配るとみんなが喜んで、『俺も欲しい』『俺も!』ってなって。今の僕が作品を作るうえで基本にしている『人に喜んでもらう』とか『見た人を驚かせる』っていうのは、多分ここから始まったんだと思います」

小学生の時に作っていた漫画。父が製本してくれた。

小学生の時に作っていた漫画。父が製本してくれた。

「同じころに友達に誘われてガンプラを作るようになって、中学に入ってからは塗装したガンプラに背景を作るということをやり始めて、ジオラマを作り始めました。ジオラマも高校に入ってから革命が起こって、技術がいっきに上がったんです。というのも、美術系の学校に入って周りの美術のレベルが上がったから。中学生までは周りに絵を描く人がほとんどいなくて、僕が学校で一番絵が上手だったんですよ。それが、高校に入ったら下から2番目になってしまうくらい、桁が違ったんです」

—それは、ある意味衝撃的ですね。高校生活はどうでしたか?

「たぶん僕も少し変わっているとは思うんですけど、変わった人が多かったですね。
美術系の人って他の人と違うことが素晴らしいという価値観なんですよ。授業中に炊飯器でご飯炊く奴とか、サッカー始める奴とかもいて、校則もなかったですからね。ただ、これがまた面白いんですけど、それでも荒れないんです。みんなやりたいことや熱中しているもの、今後の目標があるから。
ただ、個人的には高校生活は辛かったですね。僕は高校に行ったら、自分みたいにジオラマ作る人やコマ撮りアニメを作る人に会えると思っていたんです。でも、そういうことをするのは僕だけだった」

高校時代の制作ノートたち。英語の授業中に絵コンテも制作。

高校時代の制作ノートたち。英語の授業中に絵コンテも制作。

—じゃあ、けっこう孤高な創作活動の時代だったんですね。

「だからこそ、同世代の仲間が欲しいんですよね。アップルのスティーブ・ジョブズも、アードマンのニック・パークも、これぐらいの年ごろにパートナーと出会っているんですよ。そしたら、また自分の力も上がると思うんですよね。切磋琢磨したい!」

ゲームを捨てよ、町へ出よう

台車に手を入れるMozuさん。奥に座っているのはオリジナルキャラクターのマル。

台車に手を入れるMozuさん。奥に座っているのはオリジナルキャラクターのマル。

—ジオラマやコマ撮りアニメを作るうえで大事にしていることは何ですか?

「自分が納得できなかったら絶対に作り直すこと。電柱を作っている時、足場となるボルトをつける作業をしていて、途中でなんか短いなと思って計算しなおしたら、1ミリ短かったんです。結局1本1本、全部やり直しました。ほぼ自己満足ですけど(笑)。

手前がミニチュアの電柱。

手前がミニチュアの電柱。

それと、自分がまず楽しむこと。やっぱり作っている人が楽しんでないと楽しさが伝わらないんですよ。見た人を楽しませたいっていうのもあるんですけど、オリジナリティを入れたいっていうのもあって、僕はけっこう作品の中で遊んでいますね。この電柱も、よくよく見ると「宇宙語教室」とか「宇宙動物病院」っていう看板をつけていて。
ジオラマとかを作っていて楽しいことって、全部自分の思い通りにできるんですよね。制限がない。そこには自分でしか作れない、第三者が作れない楽しさがあるんです。受け身とは違う、自由や想像の余地がある。自分の世界が一つ作れるんですから。

この間、久しぶりにゲームをしてみたら、全然面白くなかったんです。なんでかなって考えた結果、今僕が作っているものって制限がないけど、ゲームって誰かの世界の中で自分が動いているんですよ。だから不可能なことがいっぱいある。もう、それが耐えられないんですよね」

—最後に、これから「ものづくりをしたい」という10代に一言、お願いします。

「『好きなことをとことんやれ』、これに尽きます。あと、これは親に伝えたいですね。子供が何か一つでもすごい好きなことを見つけたら、とことんやらせてほしい。
僕は嫌いなことを絶対にしない子供で、中2までは本当に勉強をしなくて、平均点80点のテストで6点取るくらいでした。でも、うちの両親の子育てはすごくて、好きなことだけを全力でやらせてくれたんです。テストで悪い点を取ろうが、両親は怒らないし、勉強を強制するようなこともしなくて、本当に感謝しています。『進学でつまづいたら、それは自分自身が悪いからだと気付くだろう』と思っていてくれた。親が何かしたうえで僕が進学につまづいたら、親のせいにしちゃうと思うんですよね。でも、両親は『あいつもやる時はやるだろう』って信じてくれて。実際、行きたい高校に入るために初めて塾に通って勉強を始めて、中学を卒業する時には全教科90点以上を取るようになって、目標の高校に入学することができました」

—好きなことや、やりたいことがまだ見つからない場合はどうしたら……?

「一番いいのは外に出ること。一人旅とか、おすすめです。いろんな世界を知れるので。あとは、ちょっとでも興味があることがあれば、色々調べてみること。ちょっとしたひっかかりがあったら、とことんやってみたらいい。チャンスを増やすってことが大事ですよね。だから、『ちょっとでも興味があったらやってみろよ』って思います」

Mozuさん愛用のジオラマづくりの道具たち。

Mozuさん愛用のジオラマづくりの道具たち。

この秋には、作品集を刊行するというMozuさん。それに合わせてジオラマの展示会も開催するそうなので、作品を間近で見てみたいという人はお見逃しなく!

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岩本 恵美

岩本 恵美

フリーランサー(編集・執筆、たまに翻訳)

東京・下町生まれの下町育ち。Webメディアや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランサーに。経済からエンタメまで、気になったら何でも手を出す雑食系。アナログなものづくりもデジタルなものづくりも、どっちも好きです。

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