「好きで続ける」のは、言葉で語るよりもなかなか難しいもの。かつて好きだったものがいつしか嫌いになったり、途中で挫折したり。そうやって大人になっていく人がほとんどだったりします。

 

そんな中において、埼玉県立新座総合技術高等学校に通う飯泉日菜子(いいずみひなこ)さんは、小さい頃から好きだった絵を十数年にわたって描き続けています。

 

そしてなんと、2016年には全日本高校デザイン・イラスト展で、内閣総理大臣賞に次ぐ文部科学大臣賞も受賞。

 

ところが飯泉さん、高校卒業後は絵とは違った道も模索中とのこと。一体どのようなビジョンを描いているのでしょうか?

 

お婆ちゃんの庭の景色を記録しておきたかった

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全日本高校デザイン・イラスト展 文部科学大臣賞を受賞した『ばあちゃんちの庭』

 

—『ばあちゃんちの庭』は、タイトルのとおり飯泉さんのお婆ちゃんをテーマにした作品なんですか?

 

「これは私の家の窓から見える庭の景色を描いています。祖母がいろんな植物を育てていて、私はいつもこの場所に座って外を眺めていたんです。でも、去年くらいに祖母の体調が優れなくなってしまい、庭の手入れが昔よりなかなかできなくなって。この綺麗な景色だけは変わらずにいてほしいなという想いを絵にしました」

 

—空想の生物もたくさんいますよね。

 

「これは窓から入ってくる光が生き物に変わっていくイメージです。写真を撮って、それを見ながら描いていたんですけど、次第に水槽の中みたいだなと思うようになって。それから魚とか昔飼っていた猫とか、いろいろな生き物が生まれました」

 

—ご家族にこの絵を見せたときに何か感想をもらいましたか?

 

「祖母に『お婆ちゃんの庭が受賞したよ!』って伝えたらすごい喜んでくれて。それがいちばん嬉しかったです」

 

息をするのと同じくらい日常になっていた絵との関わり方

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デッサン室に飾られている先輩たちの参考作品

 

—飯泉さんが絵に興味を持ったのはいつ頃なんですか?

 

「もう3歳とか4歳の頃には落書き帳に絵を描くようになっていたと思います。母が美大出身なこともあって、小さい頃から一緒に絵を描いたり、私が絵を描いている姿を母親がスケッチしたりと絵に触れる機会が多かったんです」

 

—やっぱりお母さんの影響は大きいですか?

 

いちばん影響を受けているのは母親だと思います。家の本棚に印象派の画集があったりして。感覚が他の人と違うというか。『他人とは違うものをやらないと面白くないじゃん!』っていう精神に惹かれるところがあります」

 

—小さい頃から芸術に触れる機会が多かったんですね。

 

「もう描くことが当たり前というか、自然と絵を描いていました」

 

—小・中学生のときはどんな絵を描いていたんですか?

 

「小学生のときには休み時間中にずっと絵を描いていて。当時は女の子の着せ替えカードゲームが流行っていて、登場キャラクターの女の子を描いているとみんなが集まってきて『もっと描いて』とか言われたりするんです。それが楽しくて。

 

中学生になってからは、理科の先生から授業で配布するプリントにイラストを描いてほしいと頼まれ、1年生の6月頃から3年生の3月まで毎月、挿絵を担当したり」

 

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—3年間はすごいですね。

 

「先生や生徒からも好評で、それがきっかけで修学旅行のしおりの表紙を依頼されたり、卒業前には感謝状ももらえて。すごくやりがいを感じました」

 

—3年間も描いてたら絵もだいぶ上達したんじゃないですか?

 

「そうですね。理科の先生が3年間分の原画を保管しておいてくれて、卒業前に全部くれたんですよ。それをペラペラめくってみたら、成長を感じるというか。自分の画風が変わっていくのが如実にわかっておもしろかったですし、今でも宝物です」

 

—デザイン系の高校に進学しようと思ったのはなぜですか?

 

「ちょうど受験シーズンに入るくらいのときに自分の将来について考える機会があったんですけど、事務作業とかをやっている自分の姿が想像できなくて。

 

それで自分のやりたいことって何だろうって考えるようになって、ものづくりに携わりたいなと思ったんです。それをきっかけに、デザイン系の高校に進学しようと思いました」

 

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飯泉さん2年次の作品「鉛筆をモチーフとした色彩構成」

 

—専門的に学ぶようになってから変わったことはありますか?

 

「高校に入学して最初にやったことがレタリングという文字をただ写すだけの作業で。色彩の授業もただ配色しているだけなのに何が違うんだろうって。

 

今まで知らなかった基礎的な学びを勉強して、無造作に作っていたものが、何が良いのか、何が悪いのかがわかるようになりました。今でもレタリングはあんまり得意ではないですけれど(笑)」

 

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デザイン科の授業で制作した飯泉さんの作品

 

—デザイン系の学校だと、クラスメイトも中学の頃とはちょっと変わってきますよね?

 

「そうですね。いい意味で個性的な人が多いとは思います。この前も試験期間が終了した勢いで七夕を竹から作って飾り付けをしたり」

 

—竹から作ったんですか?

 

「ケント紙を一枚一枚巻いて、色も塗ったりして。文化祭とかも、みんな張り切っちゃって楽しいですよ」

 

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デザイン科のクラスメイトでつくった七夕。添えられている願い事はとてもユニーク

 

—すごく楽しそうですね。

 

「みんなものづくりが好きだから、そういうのもノリノリでやっちゃうんですよ。中学の頃とはだいぶ違う環境です。いろんなところにアンテナ張っている子が多いので、自分の視野が広がります」

 

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将来については、まだたくさん悩んでいきたい

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—これから先、どのような将来を考えていますか?

 

「今は美大に進学して、工芸を学びつつより多くの分野に触れていきたいと思っています」

 

—それはどうしてですか?

 

「デザイン科に入ってから課題で木工粘土とか水粘土とかを使う機会もあって、そのなかで案外向いてるかもしれないなって思う機会があったんです。

 

そこからまだ触れていないガラスや金属にも触れてみたいと思いました。素材を知ることで作るものが広がると思ったからです」

 

—ものづくりはこれからも続けていきたいのですね。

 

「ただ、工芸の道に進んだからといって、職業まで限定する必要ないなと思っていて。絵もやりたいし、他のことにも興味があるんです。そのあたりについてはまだこれからたくさん悩んでいきたいです」

 

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少し大人びた雰囲気をもつ飯泉さん。取材後は友達と「夏祭りいきたいね!浴衣着たい!」と会話をする姿も。

 

幼いころから好きだったものづくりを続け、デザイン科に進学したことでさらに自分の「やりたい」を広げた彼女。「いろんなことにチャレンジしていきたい」と楽しそうに話す姿が印象的でした。

 

 

 

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編集チーム

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