手に青い絵の具をつけたまま現れたのは、高校3年生の石上結衣さん。

その日はちょうど夏休み前の終業式の日でした。

 

印象は、ごく普通の高校生。彼女は「静物ー海の思い出」の絵を描き、高校生国際美術展で優秀賞を受賞しました。1メートル四方ほどの大きさで、実物はインパクト大。そんな彼女も、初めからうまく絵が描けたわけではなく、美術部へ入ったのも高校から。そんな彼女が、何に悩み、なぜ作り続け、何を将来したいのかなど、いろいろ聞いてみました。

 

思わぬ受賞で、いきなり校内の有名人に!

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廊下に飾られている高校生国際美術展で優秀賞を受賞した「静物ー海の思い出」

 

—受賞作が学校の廊下に飾られていますね

 

「全校生徒の前にあるのはドキドキします(笑)。周りの友人には、恥ずかしくて言ってなかったんです。だから自分が描いた絵だと知ったときには、とても喜んでもらえました。

 

先生からは『石上さんおめでとう!』、友達からは『なんで言ってくれなかったの?』と言われました。あと、クラス替えしたばかりであまりみんなのことを知らないときに、突然クラスの男子が近づいて来て『噂はかねがね(聞いてます)! 廊下で見ました』と話しかけられたり(笑)」

 

—ご家族はどんな反応でしたか?

 

「曽祖母やお母さんの反応は『これうちにある流木だねえ』って、あっさりでした。この絵にあるモチーフの白い流木は、四国の曽祖母の家の近くで拾ったもので。四国の海は綺麗な海なんです。そこの貝殻や流木、ヒトデを勝手に拾ってきて、この絵のモチーフにしました」

 

—受賞したときの気持ちは?

 

「賞がもらえるとは思っていなかったので、素晴らしい賞をもらえて嬉しかったです。これからの励みになればいいなと思っています」

 

—中央に干物のトビウオを描いていますが、これを選んだ理由って?

 

「絵の題材について美術部の先生と相談していたときに、たまたまトビウオの干物をもらって。乾いた魚を絵にすることはあまりなくて珍しいし、面白そうだなと思ったからです」

 

—この絵の制作期間は?

 

「制作期間は約半年です。1日3、4時間くらいかけますが、締め切りの間際はもっとかかりました」

 

棚や皮のクラフトを手作りする母の影響を受けて

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1年生の頃、石上さんが描いた鯛の絵。魚の光沢感やうろこの質感を表現するのが難しかったんだそう。

 

絵はいつ頃から描いていますか?

 

「絵は物心ついた頃からずっと。実は母が服やビーズ、革製品、棚などを手作りする人でして。母を手伝ったり、勝手に木屑を拾って彫刻したりできる環境だったんです。だから物作りが好きでしたし、それが当たり前でした。

 

一方で、絵を描くのは下手くそだったんですよ(笑)。授業中に勉強するふりをしながら、バレないようにノートの端っこに落書きをしていました(笑)。いつもモンスターズインクのブーが描いた絵みたいになってしまって。でも自分の思った通りにできないのが嫌で、下手なりに何回も描いていましたね」

 

—なるほど。最初から絵を描くのは好きでしたか?

 

「絵を描くのが面白くなったのは、中学生のときの夏休みの課題で『千葉県子どもの人権ポスター原画コンテスト』に出品してからです。賞をもらえて楽しかったのがきっかけでした。今見ると下手なんですけど。それから、中学のときはソフトボール部だったんですが、高校では美術部に入ろうと決めました」

 

文化祭前の美術部は、みんなハイで鬼の形相!?

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美術部はどんな感じですか?

 

「静かに各々が作品作りをやってるときもあれば、『ここおかしいと思うんだけど、どう思う?』って聞いたり、色や影の付け方について意見を言ったりしながら、みんなで和気あいあいとしているときもあります。インスピレーションを待つというよりも、相談しながら描いてる方が多いです。

 

3年生を送る会や文化祭のときなど、期限の直前はみんな鬼の形相(笑)で、ハイになってて楽しいです。美術部の文化祭では販売用のビーズアクセサリーを作ったり、大きな看板にスターウォーズのキャラを描いたり、去年の文化祭ではジョジョの奇妙な冒険の大きなキャラ絵を描いて盛り上がりました」

 

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現在制作中の学展コンクール出展作品

 

—絵を描くのは得意?

 

「絵にも苦手なところと得意なところがありますね。私は人や生き物を描くのが苦手で、静物画を描く方が得意だし、好きです。夏休み中はずっと、毎年先輩も出展する学展というコンクールのために絵を描いています。制作期間は1日に4時間ほどで、半年はかかりそうです」

 

—絵を描いているときはどういう気持ち?

 

「私自身よりも絵を見てもらいたいという気持ちで描いている部分があります。表現としては、描く対象物をこうやって見たら面白いかもしれないと思いながら、実験的に描いていることが多いです。たとえば他の絵でできた影の塗り方を、この絵に応用して色を重ねてったらどうなるか、などと考えながら描いています」

 

—迷って描けなくなることはありますか?

 

「高校に入ってから、(高さ1メートル弱ほどの)大きい絵を描くようになったんですけど、初めからできたわけではないんです。わかんないな、と思って描いているときもあります。迷ったときは、先生に相談しますよ。

 

「静物ー海の思い出」は、『とにかく(対象を)見続けろ』とアドバイスをもらっていたので、ずっとトビウオを見続けて、色が違う、質感が違うと思いながら描いては観察していました。描けないとは言いながらも、筆は常に動かし続けています。ひたすら描いていけば、たとえ挫折して『こうじゃないな』と思っていても、別の塗り方を応用してみたりすることで、道が自ずとひらけるんです」

 

—制作はかなりストイックに行う印象を受けます。

 

「要するに、忠実にそのままを描きたいんですね。イラスト的な絵や抽象的な絵が得意じゃないから、写実的になるように何回も描いてみるうちに、やがて違う方向性が見えてきたりします。常に自分がいいと思った基準で描いていますね」

 

喜んでもらえる好きなものを、死ぬときまでずっと作っていたい

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—自分を動かしているものはなんですか?

 

「好奇心だと思います。どこまで対象を見られて、どこまで描けるのか。ここの点を描くべきか、描かない方がいいのか。どこまで細かく見られるかの興味で、感覚と試す気持ちとで描いてます」

 

—将来は何になりたいですか?

 

「もともと勉強ができるわけではないので、美術大学に進んで、自分の得意分野を伸ばしていきたいです。

 

私はなぜかコンクリートがすごく好きで(笑)、小学生のときにみた建築家・安藤忠雄さんの建築『光の教会』が好きなこともあり、建物の造形も好きです。インテリアデザインや内装にも興味があります」

 

—これからはどんな作品をつくっていきたい?

 

「ものづくりもそうですが『人に驚いてもらうようなものを作りたい』『人の感情や心を動かせる作品を作りたい』という想いが根本にあるのだと思います。喜び、悲しみ、いろいろな感情を喚起できるようなものを作りたいです。

 

小さい頃は家にある母のものやキッドで売っているものをこっそり使って、皮のブレスレッドや、折り紙の花を作ったり絵を描いたりしては、親や祖父にあげたり、友達にプレゼントしていました。

 

高校生になってからは、友達の誕生日という名目で、自分の作りたいブレスレッドをプレゼントしたりしました。友達からは『ありがとう!』ってすごく喜んでもらえましたが、内心、自分が作りたかったものを作っただけなんだよねって(笑)。

 

ですから、『私はこれをこう見ています。この見え方が私の考え方です』という想いを絵に表現している部分が強いんだと思います。その想いが作るものに反映されますから、それで喜ばれるのが一番嬉しい。死ぬときまで、相手に喜んでもらえる好きなものをずっと作っていたいです」

 

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ものづくりが好きだった母や、絵のモチーフの原点でもある海の近くの曽祖母の家。物静かな彼女は、ものづくりや絵をカタチにして、周りの人への内なる感謝や想いを伝えているのでした。
そう思うと、帰りに廊下で改めてみた絵が、また違った風に見えました。

 

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編集チーム

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